Feature タスクの仕事観

Feature– タスクの仕事観 –

院長×パーソナルトレーナー力(ちから)のバランス

イントロダクション

ホームページに掲載している言葉だけでは伝わらない歯科治療に対する想いを、『タスクの仕事観』と題して院長・髙木翼(たすく)自身の言葉で届けていきます。
第一回に続き、異業種のゲストをお招きして対談形式でお届けします。協力してくださったのは、『ボディテクトスタジオ目白』代表のパーソナルトレーナーの荻山悟史さん。「歯科とパーソナルトレーニング? 全然関係ないじゃん」と思ったあなたにこそ、読んでほしい対談です。キーワードは“力(ちから)のバランス”です。

歯科の問題は「ばい菌」と「力」、二つに大別される。

高木院長:よろしくお願いします。今日対談をお願いしたのは、荻山さんに力のバランスの話を伺いたかったからです。荻山さんが行うトレーニングも、筋力だったり姿勢だったり、身体のバランスを整えるアプローチをされますよね。

荻山さん:そうですね。僕らの世界ではそういった姿勢やバランスを整える目的のトレーニングのことをコーディネーショントレーニングと言っています。具体的には、胸や背中、腹筋、お尻など部位毎に筋肉を鍛えるのではなく、頭からつま先まで全身の関節を連動させながら行うようなエクササイズを取り入れていて。単純な筋力アップとは違って、身体をリラックスさせスムーズに動けるようになるためのトレーニングが大切だと考えています。

高木院長:歯科でも同じように、問題のある一箇所だけを見るのではなく、口内全体のバランスを見ることが大事なんです。歯科の問題って突き詰めると、ばい菌と力、原因は二つに大別されるんですよ。ばい菌はどのドクターでもみんな気にするんですが、力の問題に関しては後回しにしちゃってるドクターも多いように思います。

荻山さん:そうやって整理して話してもらうのははじめてなので、おもしろいですね。

高木院長:ばい菌は虫歯や歯周病の直接的な原因になるので、分かりやすいですよね。僕もまず最初に行うのは、ばい菌を減らしたり、ばい菌に負けないように組織抵抗力を高めたりっていう治療です。でもそれだけですべてが解決することはあまりなくて、多くの場合、力の面からもアプローチする必要があるんです。
荻山さん:歯科における力っていうのは、どういう力ですか?

高木院長: 主にかみ合わせですね。あとは歯並びも。ご存知だと思いますが、下顎って頭蓋骨とつながっていなくて、筋肉で支えられているだけのブランコのような構造で。だからちょっとしたことでズレやすいんです。それこそかみ合わせがずれていたら、顎も日常生活のなかで少しずつズレて行きます。顎がズレたらそれに合わせて身体もズレますよね。その辺は荻山さんのほうが詳しいでしょうけど。

荻山さん:身体は全身を使ってバランスを保とうとしますからね。例えば頭蓋骨に対して下顎が左にズレたとしたら、その反動で左肩が上がって、さらに右の腰が縮んで、重心を少し右に傾けてバランスを取ろうとすると予測できます。その小さな歪みをきっかけに肩こりや腰痛になるリスクが高まるかもしれません。

高木院長:身体の歪みがいろんな問題を引き起こすことは想像できますよね。

力がかかり続ける部位は、悪くなりやすい。

高木院長: あとは単純に、負荷がかかる部位は悪くなりやすいという話もあります。例えば、いま僕らも椅子に座っていますけど、よく使われている椅子と、たまにしか使わない椅子、どっちが壊れやすいですかって聞かれたらどう答えますか?

荻山さん:よく使われている椅子ですか? 素直に考えたら。

高木院長:そう。椅子で考えたらみんな分かるのに、歯のことになると別だと考えちゃうんです。同じですよ。噛み癖や、歯並びの関係でよく力が加わる部分は、物理的にも、対ばい菌でも、弱くなりやすいんです。詰め物を入れても取れやすいですし。歯科矯正というと審美のイメージが強いですが、実は健康上も重要な治療なんです。

荻山さん:なるほど。

高木院長:歯に問題が起きた時、その問題だけに対応してもダメなんですね。なんでその歯に問題が起きやすいのか、その原因を知って、そこにアプローチしないと、そのときは良くなってもすぐ再発しちゃうんです。詰め物取れたから穴を埋めました、は誰でもできるんですけど、それじゃ根本的には何も解決していないって言う。
荻山さん:その辺は身体でも同じですね。腰が痛いからって、腰そのものを揉んでもらっても、あんまり意味がないんですよ。

高木院長:どうすればいいんですか?

荻山さん:原因は人それぞれですが、例えばこないだ高木先生を診せていただいたときは、事前に肩や首の張りがあると伺っていましたが、体の状態を確認すると腹筋が少し弱いように見受けられました。それでバランスが崩れて反り腰気味になり、足の指がしっかり地面に着かない浮き指状態になっているなと。だから腹筋のトレーニングを「ひて」、普段歩くときに腹筋を意識しましょうっていう話をしました。

高木院長:あれは目から鱗でした。お腹を意識して締めるだけで、腰が落ち着くし、首も座る感覚ですごく楽で。

荻山さん:どこか一箇所、一番ネックになる場所があって、そこを突き止めてアプローチしていく感じですね。その場所というのは、症状が出ている場所じゃないことが多いので、トレーニングを受ける方と認識を合わせるのが一番大変なことかもしれません。でもそこさえ合えば、あとはもううまく行っちゃいますね。
Profile
美濃 耕介

荻山 悟史さん身体作りに関する著書、監修書が多数ある敏腕トレーナー。目白のリッチモンドフィットネスクラブで勤務した後、2007年にパーソナルトレーナーとして独立し、2012年に自身のスタジオ『ボディテクトスタジオ目白』をオープン。小学生から80代まで幅広い人々にマンツーマンで指導されています。高木院長とは幼稚園のパパ友。

ボディテクトスタジオ目白
https://www.satoshiogiyama.com/

高木 翼

高木 翼タスクデンタルオフィス院長。朝日大学歯学部卒業後、医療法人社団・伸整会に勤務。インディアナ大学の研究員を経て、2018年4月に生まれ育った地である西早稲田・高田馬場でタスクデンタルオフィスを開業。「また来たくなる歯科医院」を目指して、患者様お一人おひとりと丁寧に向かいあっています。

文:田中ヤスタカ 写真:東 卓