Feature タスクの仕事観

Feature– タスクの仕事観 –

院長×歯科技工士歯科治療とお金

イントロダクション

ホームページに掲載している言葉だけでは伝わらない歯科治療に対する想いを、『タスクの仕事観』と題して院長・髙木翼(たすく)自身の言葉で届けていきます。
記念すべき第一回は、ゲストをお招きして対談形式でお届けします。協力してくださったのは、詰め物や被せ物などの“歯づくり”のプロフェッショナル集団、株式会社onim design代表の美濃耕介さん。タスクデンタルオフィスもいつもお願いしていて、ハイクオリティな被せ物(セラミックの歯など)を仕上げていただいています。実は院長の中学・高校の先輩でもある美濃さんとの熱い会話、ぜひご覧ください。

自費診療には、保険診療との料金差に見合う価値があるのか?

高木院長:よろしくお願いします。今日はいろんなお話がしたいんですが、1つ大きなテーマにしたいのが、「自費診療と保険診療ってどうちがうの?」という点です。患者様にとってもとても気になる部分だと思いますし、僕ら歯科関係者としても正しい情報を発信したい部分です。

美濃さん:大事なテーマですね。

高木院長:うちでは自費診療も保険診療も両方行っていますが、お口の状態によっては自費治療を勧めることがあります。でもやっぱり、保険のほうが安いじゃないですか。自費治療って料金分の価値が本当にあるの?って疑問に感じているという方も多いんじゃないかって思うんです。自費治療にすると、何が変わるんでしょうか?

美濃さん:歯科技工士の関わる部分、補綴(ほてつ。歯が欠けたり無くなったりした部分を詰め物や被せ物で補うこと)でいうと、使える素材が違うっていうのが一番分かりやすいよね。保険だと、歯の位置によっては金属を使うことになっちゃう。

高木院長:なるべく金属を使わない方向になってきていますよね。

美濃さん:金属アレルギーやメタルタトゥー(金属を入れた箇所の周囲の歯茎が徐々に黒ずんでいくこと)なんかが問題視されるようになって、いわゆるメタルフリー治療が推奨されてるよね。でも今のところ、保険治療だと金属を使わざるを得ないことも多いんだけれど。
高木院長: 保険は銀歯、自費だと白い歯というのは、かなり知られるようになりましたよね。でもあくまで審美的な差、見た目の差としての捉え方が一般的なように思います。もっと医療的な側面でのメリットも伝える必要があると思っています。再発リスクをどれだけ下げられるか、噛み合わせが快適かどうか、外れたり欠けたりせずに長持ちするか、とか。

美濃さん:なるほど。そういう部分に関しては、素材以上に加工の精度が重要だね。同じ素材を使っても、誰がやるかで全然ちがうから。

高木院長:歯科医の型取りの精度と、技工士さんの技工の精度、両方に左右されますね。

美濃さん:それぞれの技術も重要だし、連携も重要。患者様の希望を汲み取る力も。でも、丁寧に作業して、歯科医とも綿密にコミュニケーションして、患者様の声も聞いてってことをやっていると、保険治療の報酬額ではどうしても難しいのも事実。自費で治療する意味って、そこだよね。

高木院長:そうなんです。美濃さんたち技工士さんが、どれだけ丁寧な仕事をしているか、どんな想いで歯科技工に取り組まれているかを知ってもらえれば、自費治療の金額にも納得感を持っていらだけるんじゃないかと思って。だから熱い想いを聞かせてください(笑)

精度を出すために、時間と手間、勉強を惜しまない。

高木院長: 僕は補綴物の精度って減点方式で決まると思ってるんです。型取り、加工、合着(取り付け)といろいろな工程がありますが、どれか1つダメなら、他がどんなに良くてもダメだという考えです。優秀な歯科技工士さんにお願いして、減点なしの加工をしていただいても、そもそも歯科医の型取りが90点だったら、それ以上の点数にはなりません。

美濃さん:逆もだよね。先生がどれだけ完璧な型を取ってくれても、技工士の仕事が悪ければ意味がなくなっちゃう。精度を上げるには、どちらかだけが上手でもダメで、チームとしての総合点が重要だと思う。

高木院長:onim designさんにお願いしているのも、そこなんです。必ず間違いないものが上がってくるっていう安心感があります。精度を出すために、どんなところを意識されているんですか?

美濃さん:いろいろありますが、基本的なこととして、加工の際は必ずマイクロスコープを使います。ミクロン(0.001ミリメートル)単位の調整が必要なので、肉眼やルーペでは追いつきません。最低でも20倍拡大以上で作業します。タスクデンタルオフィスさんも、マイクロスコープを使ってるよね。
高木院長:そうですね、精度が重要な治療は20~30倍で見ます。

美濃さん:細かくやるのが大事だよね。あとは、解剖学的なことも知ってるかどうかで仕上がりが変わります。歯の成り立ちや、顎にどうつながっていて、神経はどう通っているのか。そういうことをちゃんと勉強している技工士は、一段高いレベルの仕事ができます。

高木院長:材料の特性も詳しいですよね。

美濃さん:加工過程でいろんな材料を使うから、自然とね。特に気を使うのは加工後の温度管理。どうしても固まる過程で歪みが出ちゃうので、その歪みを取るために。例えばシリコンだったら○○℃で△△時間休ませる、とか材料によって決まっているんです。

高木院長:材料もいろんなものがありますよね。すべてを把握されてるんですか?

美濃さん:もちろん把握しようと努力しているよ。新しい材料が出てきたら、まずその特性を調べます。日々、勉強ですね。
Profile
美濃 耕介

美濃 耕介さん神奈川歯科大学付属歯科技工専門学校専攻科卒業後、都内某歯科医院等での勤務経験を経てユラデザイン株式会社取締役に。その後、同場所にて株式会社onim designを設立し、代表取締役に就任(現職)。精度、審美性ともに一流の補綴物を制作してくださる、タスクデンタルオフィスの頼れるパートナー。NLP(神経言語プログラミング)心理カウンセラー資格取得。

株式会社onim design
https://onimdesign.co.jp/

高木 翼

高木 翼タスクデンタルオフィス院長。朝日大学歯学部卒業後、医療法人社団・伸整会に勤務。インディアナ大学の研究員を経て、2018年4月に生まれ育った地である西早稲田・高田馬場でタスクデンタルオフィスを開業。「また来たくなる歯科医院」を目指して、患者様お一人おひとりと丁寧に向かいあっています。

文:田中ヤスタカ 写真:東 卓