Feature タスクの仕事観

Feature– タスクの仕事観 –

院長×歯科技工士歯科治療とお金

一つひとつの仕事にベストを尽くすために。

高木院長:そうやって1つ1つの作業に時間と手間をかけたり、新しいことを勉強しようと思うと、保険診療では難しい面もありますよね。診療工程毎に点数が決まっていて、質のいい治療も、そうでない治療も同じ報酬となると、経営上はなるべく時間をかけない方針にならざるを得ません。

美濃さん:精度を出そうと思うと時間がかかる。だけど時間をかけすぎると、保険診療の報酬額では割が合わなくなっちゃう。結果、効率重視、悪く言うと流れ作業になっちゃう面はあるね。

高木院長:もちろん、先生や技工士さんは保険診療のなかでやれる精一杯の仕事をされているとは思います。ただ、時間や手間、材料の面でこだわりたくてもこだわれない部分が出てきてしまいます。本当はベストな治療をすることだけに集中したいのに、いろんな制限のなかでの落とし所を考えるという発想になってしまうのが辛いところですね。

美濃さん:そういう状況をどう打破するかって考えたときに、昔の技工士たちは気合でなんとかするような面もあって。良いもの作りたい、でも時間が足りない。なら寝ずにやろう、みたいな(笑)
高木院長: 今でも同じ感じの会社もあるんじゃないですか?

美濃さん:あるだろうね。でも、それだといいものってつくれないよね。いろんな先生から何万個も模型を預かってると「あ、これ疲れてるときに作ったな」って思うことあるもん。逆のことを思われたくないから、無理せずにいいものをつくれるような環境を目指してる。疲弊しないようにちゃんと休み取れて、オフィスも広くて清潔にして。

高木院長:経営的な面はどうクリアされてるんですか?

美濃さん:今は基本的に、自費診療のお仕事しか受けてない。しっかり時間をかけても、ちゃんと利益が出る金額でやらせてもらってます。もちろん技術に見合わないような高額料金にするつもりはないけどね。自費の補綴物の技術料って、値付けがピンキリだけど、別に最高級にしたいわけじゃなくて。中くらいの価格で、一流のクオリティーが理想かな。onimに頼んでおけば間違いないと思われたい。

高木院長:うちがまさにその考えでお願いしています(笑)

テクノロジーの進歩が、患者様にもたらすもの。

高木院長: 時間と料金の問題は、技術の発達である程度解消できるかもしれませんね。今だとデジタルデンティストリーが注目されています。

美濃さん:デジタル技術の発達はすごいよね。口の中を撮影したら3Dデータ化してくれて、そこに合う補綴物を自動で削り出してくれる。最高の品質を求めるなら、人間の手で作るものにはまだまだ敵わないけど、ほんの数年で驚くくらいレベルが上がってきてるね。誰がやっても同じ精度が出せるっていうのはすごいことだよ。

高木院長:術者のスキルにコントロールされないっていうのは心強いですよね。どの歯科医院で誰の治療を受けても、一定以上の仕上がりにはなるということなので、業界の底上げになると思います。

美濃さん:患者様側のメリットになることって何かあるかな?

高木院長:レーザー光を当てるだけで型取りが済ませられるから、型取り器具を口の中に入れずに済むようになったのはいいことですね。口が開きづらい方への負担が小さくなるし、感染対策としても意味があります。消毒された器具とは言え、口の中にものを入れるのにはリスクが伴いますから。

美濃さん:コミュニケーションの面も楽になったよね。LINEができて、ちょっとした確認が素早くできるようになったけど、今はビデオ通話ツールもあるから。打ち合わせが本当に楽になった。あとは、途中過程がデータで残るから、iPadとかで患者様の説明にも使えそうだよね。

高木院長:過程を見てもらうのはいいですよね。冒頭でも話したとおり、「自費診療ってなんで高いの?」と感じてる方はまだまだ多いので、どれだけ魂を込めて仕事しているかを見てもらうことで、少しでも納得してくれるんじゃないかと思います。

魂を込める。
愛を持って仕事する。

美濃さん:魂を込めるって、本当に大事だよね。ものをつくる仕事だから、ただ不具合がないっていうだけじゃなくて、患者様を感動させるようなものをつくりたいと思ってやってるから。

高木院長:優秀な技工士さんって、職人というかアーティストというか、本当につくったもので感動を与えられる人ですよね。模型見て思いますもん。こんな繊細なグラデーション、どう作ってるの?って。

美濃さん:そういう風に言ってもらえるのはすごいうれしい。歯科医と技工士の関係って、それぞれできることが違う、対等な関係だと思うんだけど、なかには歯科医が上で技工士が下みたいに思ってる方もいて。先生だけじゃなく、技工士自身がそう思っちゃってる場合もある。でも、最初の方でも話したように、チームとして動くわけだから。

高木院長:プロとプロとして、お互いに敬意を抱けないと難しいですよね。

美濃さん:本当に。翼先生も仕事への情熱がある人で、そこにシンパシーを感じてるからいっしょに仕事できてるのがすごくうれしい。

高木院長:結局のところ、患者様への愛があるかないかが一番大事ですよね。さっきの技術の発達の話じゃないですが、平均的な治療は誰でもできるようになってきています。上手なのが普通だから、別の武器を身に付けないといけない。でもそこで大事になるのって突飛なスキルじゃなくて、愛あるコミュニケーションなんじゃないかなと思っています。

美濃さん:分かるなあ。うちもスタッフを採用するときは、スキルが一定以上あるのは前提として、会話ができる人に来てもらってるもん。これまでは技工士って裏方で、話下手な職人みたいな感じの人も多かったけど、これからはそれじゃ成り立たないと思う。技工士同士や先生とチームとして動くのにも、患者様の真意を汲み取るのにも、コミュニケーションが一番大事だから。

高木院長:美濃さんとはこういう熱い話ができるのでうれしいです。飲みに行っても長くなっちゃいますもんね(笑)

美濃さん:ついね(笑)

高木院長:今日はありがとうございました。患者様を幸せにできるように、これからもお力添えください。

美濃さん:こちらこそありがとう! ぜひいい仕事していきましょう!
Profile
美濃 耕介

美濃 耕介さん神奈川歯科大学付属歯科技工専門学校専攻科卒業後、都内某歯科医院等での勤務経験を経てユラデザイン株式会社取締役に。その後、同場所にて株式会社onim designを設立し、代表取締役に就任(現職)。精度、審美性ともに一流の補綴物を制作してくださる、タスクデンタルオフィスの頼れるパートナー。NLP(神経言語プログラミング)心理カウンセラー資格取得。

株式会社onim design
https://onimdesign.co.jp/

高木 翼

高木 翼タスクデンタルオフィス院長。朝日大学歯学部卒業後、医療法人社団・伸整会に勤務。インディアナ大学の研究員を経て、2018年4月に生まれ育った地である西早稲田・高田馬場でタスクデンタルオフィスを開業。「また来たくなる歯科医院」を目指して、患者様お一人おひとりと丁寧に向かいあっています。

文:田中ヤスタカ 写真:東 卓